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2003/08/14発信:レポート
カンボジア井戸掘り紀行 第1日目

まえがき

道を歩いているだけで、何も理由もなく殺されたときがあった。
女性は真っ赤に焼けた鉄のやりを、女性自身から口に達するまで差し込まれ、串刺しにされて殺された人もいた。人は何故これほど残酷に、そして残虐に人を殺すことが出来るのだろうか。この話はそれ程昔のことではない。1975〜1979年までの約4年の間に、ポル・ポト政権による『粛正』という名のクメール・ルージュによる虐殺行為の実話なのだ。

皆さんは、カンボジアという国がどこにあるかご存じですか?
東南アジアということはほとんどの方が知っているでしょう。
ベトナムとラオスとタイに囲まれた、とても大きな国なのです。その歴史は戦いの歴史と言えます。その証拠に、アンコールワットの壁画に刻まれた絵の殆どは、戦争の歴史を語っているのです。
その為か今でも非常に貧困な国と言わざるを得ません。
雨期と乾期がはっきりと別れているために、乾期では雨期に溜まったドブ水のような飲み水に頼っています。その為に幼児はもちろん、成人ですら命を落とす危険を常に抱えているです。
私はカンボジアに井戸を掘るボランティア団体を支援し、そして今回その寄付をした井戸の現場を視察するツアーに同行しました。その時の視察の模様を紹介します。


初日


「ご主人様、早く起きてください!」と言わんばかりに小さな体を思い切り振るわせ、ベッドサイドに置いてある小さな目覚ましが朝の5時を告げた。
朦朧(もうろう)とした意識の中、ベルを止めた。

3月になったばかりの朝の寒さは、一気に現実に引き戻す役割を見事にこなした。
「そうか、今日だったな……」
いつも叱られる総務課長に、「この日だけは、仕事を入れないでください!」と、必死に頼み込むほどに、楽しみにしていたカンボジアに井戸堀りに行く出発日だったのだ。前日までの出張と数日分の仕事をまとめてやり貯めした為に、まだベッドに入って数時間も経っていなかった。しかも、出発当日の朝だというのに荷物の用意すらしていないのだ!
「あ〜、この寝ぼけ頭で忘れ物をしなければよいが……」とにかく、熱いシャワーと一杯のコーヒーで頭の中を覚醒させる。
「う〜む、歯ブラシはホテルにはないだろうし、シャンプーも持っていくか……」などと考えながら、一体何泊分の下着を持っていけばよいのだろうかと指を折る。
とにかく井戸を掘るのが目的だから、洒落た店に行くための上着や革靴などの必要はない。
ズボンもジーパンが1本有れば十分だろうから、それほどの荷物にはならない。
社員に以前あげたスーツケースを借りて、何だかんだと詰め込んで行く。
当日になっても日程を把握していないのだから、まったくもって我ながらチョット呆れてしまう。
心配そうに見送りに起きてきたお袋に、目いっぱいカラ元気を振舞い、そそくさと駅へと急いだ。


*出発


成田空港へは集合の10分前に到着した。
『E』と大きく書かれたカウンターの入口前で待っていると、今回の視察を企画した、光文社の山崎喜宏氏がさっぱりとした姿でやって来た。いつも髭ぼうぼうの姿しか見ていないので数歳も若く見えてしまい、思わず吹き出しそうになった。
彼は先輩にあたる田口氏(後述)と数年前から、カンボジアに井戸を掘る支援を続けていた。
『特定非営利活動法人 カンボジアの健康及び教育と地域を支援する会(Support for Cambodian Health,Education &Communities)』略称『SCHEC』の理事である。
もちろん私も支援を行っており、正会員の一人でもあります。

続々とメンバーが集まって来た、と言ってもわずか六名だ。
この時にはまだ私は知らなかったのだが、一日早くプノンペン入りをしている四人と現地で落ち会うことに
なっており、全員で十人ということになる。
まず成田で同乗する他のメンバーを紹介しておこう。

月刊「中央ジャーナル」主幹 福田氏 同 会田編集長
ジャーナリスト 伊藤氏 そして、「SCHEC」の代表理事でもあり
ジャーナリストでもある 田口氏だ。

さすがに旅慣れているのは私だけではなく、皆さん中々の強者(旅をする上での)であるとことは、その格好や荷物の大きさを見れば容易に想像がつく。
機内に持ち込める大きさのスーツケースに4泊分の荷物を詰め込んでいるので、荷物チェックのレントゲン前に並んでいる人々を横目に、さっさとチェックインを行った。
外国では、乗り継ぎの間に荷物が紛失してしまうという経験や話を聞いたことがありませんか?
実は私はその実体験者で、数年前に飛行機を乗り継ぎ成田空港に到着した時に、自分の荷物だけが降りてこなかったことがありました。「これは大変なことになったぞ!」と危惧したのだが、幸いたった一日遅れで家に届けられた。外国に行くときには荷物はコンパクトにして、出来るだけ持ち込める大きさにするべきだとつくづく感じたものである。
今回はタイのバンコク空港経由でカンボジアのシュムリアップ空港に向かう。
出来るだけ荷物を預けることを避けたかったのは、私だけではなかったようだ。
手続きが終わると普段時計をしない私と山崎氏は、2千円ほどの腕時計を買った。とてもじゃないが高級腕時計などをして外国へ行くと、泥棒が気になって仕方ない。使い捨てのつもりでこの程度の時計を買って旅行をするのは、なかなか良い方法でお勧めである。

さてさて、さすがに日本を離れるとなると最後に日本食を食べたくなり、朝食を済ませてきた私も山崎氏につきあって蕎麦に箸を伸ばした。そして機内へと乗り込んだ。
先ほど買った時計の針を2時間戻した。
未知なる国への熱い希望と期待で胸が膨らんで行く。

AM11時出発。こうして旅が始まった。


PM16時バンコク空港到着(日本時間PM18時)

まずバンコク空港に到着し乗り換えの手続きを行う。
これは田口氏が手慣れたものなので、すっかりお任せである。
バンコク空港には、乗り継ぎを待つためと思われる人々が通路に座り込んでいた。傍目には雨宿りをしている風にしか見えない(おっと失礼!)。
女性の前のどんぶりの中には、お茶漬けらしきものが入って湯気を立てていた


飛行機の出発を待つ人々
同じ様な人達が数十人は空港内にいた。

「どこでお湯を貰ってきたのだろうか?」などとくだらぬことを考えていると山崎氏から、「バンコクエアは、ロシアの古いプロペラ機を使用しているので覚悟しておいた方が良いですよ」と念を押された。
YS11と言う日本製のプロペラ機には、今でも北海道などで利用している。
『さぞかし、それより凄いのだろうな』と勝手に想像を膨らましながら滑走路へ向かった。
そんな思いは杞憂にしか過ぎなかった。
大変綺麗な飛行機で、機内もまっさらで新機と言えるほどだった。
「おや? 山崎に騙されたかな?」と私が思ったのを山崎氏も気づいたのか、「いや〜、去年乗ったときは本当に汚かったんですけどね〜!」と言い訳けがましい説明。
ま、どちらでも良いので信じることにしておこう。


機内に乗り込む福田氏

一時間少々のフライトを終え、シュムリアップ空港に到着した。


シュムリアップ空港
他の日本人客も見えたが本当に小さな空港だ。

*シュム・リアップ、ガイダンス
シュム・リアップ(Siem Reap)と言う名のこの町は、カンボジアの首都プノンペンから北西へ約250km、飛行機で約45分のトンレサップ湖の北側にある町だ。この小さな街がアンコール・ワットへの拠点となる。 はるか昔から歴代の王が都城を築いた地で、町の周辺には数々の遺跡が点在している。


アンコール・ワットへは街の中心部から約7km、車で約10分の距離。
国道6号線を東に約15km行くとロリュオス遺跡群が、南へ約16km行くとトンレサップ湖に着く。
町は南北に流れるシュムリアップ川を挟んで両側に開けている。
公共機関や政府の建物が多いのは川の西側で、南北に走るシヴォタ通りがメインストリートだ。
この通り沿いにレストランやホテル、ゲストハウスが並び旅行者の姿も多い。
川の東側になると民家が多く、細い道がはり巡らされている。(ただの畔道?が広がっている)
日本からの直行便がないので、我々のようにバンコクかプノンペンを経由するのが一般的だろうが、中には節約旅行をしている外人などは、ピックアップトラックを利用している。
最初見たときには、汚いトラックの荷台に綺麗な白人女性が、乗っているのにビックリしたものだ。
市内から国道6号線を東に4kmの所にあるピックアップトラック乗り場や、橋近くのガソリンスタンドから、プノンペン、バッタンバン、シソポン、ポイペト行きが、毎日運行している。
プノンペン行きは、料金が荷台で3US$〜、車内が7US$〜。所要約7時間の長旅となる。
しかし、大抵はダイレクトに行くことは少なく、シソポンで乗り継ぐ場合が多い。
シソポンまでは、それでも約2時間30分かかるので、とても私にはチャレンジする勇気はないが、どなたかチャレンジしてみてはいかがだろうか。一生の思い出となること請け合いである。
もう一つの手段としてバスの利用がある。
プノンペン行きが所要約7時間、料金が6US$。またバンコク行きもあるが、途中の国境で乗り換えることとなる。トータルで11US$。所要約10〜11時間。こちらはさらに勇気が必要となりそうだ。


*到着

さて、日本を出発してから約8時間後に、シュムリアップ空港に到着した我々だが、入国審査を受けるときに、空港内を撮影しようと、デジカメを肩に掛けたままだった。
案の定デジカメを指さし、「How much is this?」の様なことを聞いてくる。
「500US$」と答えた。自分では、あまり高級なものを持ち込んだと思われないように、これでも半額ぐらいに答えたのだが……。
「OH!!!」
などと感嘆詞をいくつか付けながら、隣の入管に見せている。
しかも後ろにいた奴までデジカメを持って騒ぎ始めてしまった。
「まずかったかな〜!? 100US$位に言っておけばよかったかな」しかし、この雰囲気では100US$と言っても、大騒ぎを起こしそうな雰囲気だ!結局は無事に入国を済ますことが出来たのだが、一時は5〜6人ほどが、他の入国審査をほったらかして集まってきたときには、本当にどうなるかとヒヤヒヤものだった。「この町では金のことは慎重にしなければならないな」と肝に命じた。
なにせ通貨はドル($)とリエル(Riel)が使用されているが、1US$で約4,000リエルとなる。
つまり100リエルが約3円と言うことだ。到着すると、ガイドであるとってもチャーミングなレーンアンと、中国人の恩さんが迎えてくれた。


ガイドの恩さんとレーンアン

機内では夕闇の中で見えた広々と広がる湖を見て、てっきり南シナ海だと思っていたら、トンレサップ湖だと教えられ驚いた!トンレサップ湖は琵琶湖(670平方キロメートル)の4倍以上の3千平方キロメートルもあるというのだ。さらにビックリしたのは「伸縮する湖」と呼ばれ、雨期になるとさらに3倍以上の1万平方キロメートル(琵琶湖の約15倍)にも膨れ上がるというのだから、ビックリの2乗である。

さてさて、やっとバスに乗り込んだ。バスの中は我々6人と数名の日本人が同乗している。
ここでも驚いたのは、単に日本人のツアー客だろうとばかり思っていた同乗者が、同じ井戸掘りの仲間だったのだ。この時に初めて我々以外にも同行者がいることや、彼達が先にプノンペン経由でシュムリアップ空港に到着したことを知った。我ながらなにも知らないまま参加したものだと呆れ返る。
少々言い訳をしておくが、山崎氏から送られてきた日程表は、出発する数日前であり、私が大阪出張中で先にも述べた通り、仕事が立て込んでいたので帰京してからも全く見る暇がなかったのである。だが、せめて行きのスカイライナーの電車の中で見ておけばよかったのにと後悔したのは、この時だけではなかった。


*ホテルにてナムさんと


ホテル シティ・アンコール

ホテル・フロント

宿泊は、五指には入ると言われた高級ホテル『シティ・アンコール』だった。
ホテルでは、オーナーのナムさんが自ら迎えてくれた。
そして、チェックインを済ませて部屋に入ると、広々としたツインベッドが迎えてくれた。


「随分と安い旅行の割には豪華な部屋だな」
格安ツアーではないが、趣旨が趣旨な為に札ビラを切るような旅行ではなかったからだ。
その理由は直ぐに分った。



右から 通訳 恩さん,国会議員 ナムさん,SCHEC副理事 田口氏

ナムさんは我々『SCHEC』の支援者で、田口氏とも旧知の仲だったのだ。
だから格安でホテルを利用させてもらうことが出来たのである。
しかもナムさんは「カンボジア国会議員」だった。所属は下院の銀行・金融委員会、シェムリアップ州選出、人民党所属です。今回の井戸掘りや学校視察など、最後まで同行していただきました。

ナムさんは日本テレビ、『電波少年 アンコールワットへの道』で、ゴールしたときにアンコールワットで迎えた人物なのだ。そう言われてみれば、「あ〜、あの時の人か!」と思われる方も多いのではないだろうか。

皆で最初の食事を取る。味は、お隣のタイなどのイメージから、「相当辛い!」と思われているかもしれないが、全くタイとは違って日本人向きだ。最初に口にしたときは、敢えて日本人向きにアレンジしているかと思ったが、本当にそのままの味とのこと。歴史的にはインドの影響もあるが、味的には中国の影響を大きく受けていると言えるかもしれない。
とにかく、外国に行くと食事が合わないという方にはお勧めである。
ナムさんは食事の間もカンボジア情勢や問題点などを力説され、真剣に国を思う姿に感心させられた。

 
食事をしているレストランの中や、ホテルの裏の大きなステージでは、毎日、劇を披露している。
まるで中国の『京劇』を見ているようで、ここでも中国文化を垣間見ることが出来る。

レストランからロビーに席を替えても、さらに過去の歴史や現状などを得々と説明する姿に、長旅の疲れも忘れ聞き入り、メモを取る指先にも自然と力が入っていった。
“まえがき”で書いたのは、この時にナムさんから聞いた話である。


さて、いつまでも聞いていたいのだが、皆の頭が上下に揺れ始めたのでここらで切り上げ、ベッドへと入ることにしよう。自分では疲れたとは思っていなかったが、横になると数秒もせずに深い眠りに落ちていった。

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