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現在の階層 A・P総研サイト/TV・マスコミ関連/1999/10/28


前書き

 このCOMPSTAT(コムスタット)は、NY市警(NYPD)から提供していただいた資料を、 JSN出版局(日本セキュリティ情報サービス)が翻訳し、提供して頂きました。何故、ニューヨークから犯罪が減少したのかが、少しで也ともお分かり頂けるのではないしょうか。後書きにも有りますが、この資料をお読みになって少しでもお役に立てて頂ければと思います。

ニューヨーク市警レポート1.

COMPSTAT(コンピュータ統計)日本語翻訳JSN出版局(日本セキュリティ情報サービス)

行動するリーダーシップ

1.前書き

 ルドルフ・ジュリアーニ市長とハワード・セイファー警察本部長官のリーダーシップを通じて、また男女警察官のたゆみない努力を通じて、ニューヨーク市はこれまでにない犯罪の減少を経験している。 1990年には2245件あった殺人事件が1997年には767件に減少し、1967年以来最低となった。前年の1996年に比して22%の減少である。FBIの統一犯罪記録によると、1997年における主要7犯罪(殺人、強姦、強盗、押込み、重窃盗、暴行、及び車両窃盗)は前年の1996年に比して9%以上の減少であり、過去4年に比べると44%の減少となっている。

 警察本部の業績改善には、断固としたリーダーシップ、警察本部各階層における幹部及び警察官の熱心な職務遂行、地域からの協力と支持、並びに「コムスタット」システムを活用した犯罪統計のコンピュータによる解析が寄与している。統計は「コムスタット」システムの最も目立つ部分であるが、それが最重要な部分ではない。「コムスタット」システムの最重要な部分はリーダーシップにある。このリーダーシップとは市長と警察本部長、あるいは街頭でパトロールする巡査のリーダーシップであり、これらこそが警察本部の業績をこれまでになく改善させた原動力となったのである。警察本部全体を通じて、リーダーシップの重要な焦点は分署長におかれている。

「コムスタット」システムにおける最重要部分は、犯罪との戦闘において、分署長に自身の判断で行動と改善を実行できる権限を与えたことである。分署長に犯罪と闘う権限を与えられたことは、同時に彼らに犯罪と闘う新たな責任が課せられたことでもある。市警本部の幹部は、分署長が犯罪と闘う努力を評価するだけではなく、署長の業績をも評価するようになった。

この文献では「コムスタット」システムの要点をまず簡潔に紹介し、次に「コムスタット」システムの背景を手短かに取り上げ、次いでやや詳細に「コムスタット」報告の作成とその利用に方法に関して具体的に説明し、その上で「犯罪戦略会議」がどのように機能しているかに触れる。この文献の目的は、「コムスタット」システムの働きに関する情報を提供し、その情報を活用して各自の目標達成に役立たせることを最重要課題としている。

2.犯罪減少に向けての4ステップ

警察本部が犯罪に勝ちを収めるには、次の4ステップが極めて重要である。

  • 正確でタイムリーな情報収集
  • 迅速な人員配置
  • 有効な戦術
  • 厳格なフォローアップと評価

 広範にかつ継続的に犯罪を減少するにはこれらの4ステップが必要であり、各ステップごとに注意深く検討することが求められる。

2-1.正確でタイムリーな情報収集

●犯罪を減らすには、警察本部として犯罪を知る必要がある。特に下記の項目が重要である。

  • 犯罪発生の種別(盗難、押し込み)
  • 犯罪の発生地域(場所及びその地域環境)
  • 犯罪の発生日時(何日、何時)
  • 犯罪の発生理由(発砲事件は薬物事件と関係があるか)

●犯罪情報を収集するためには、すべての逮捕者から情報を求めることが重要である。

  • 被疑者は街頭で何が起こっているかを知っており、これらの情報を警察官に提供しようとする動機をもっている。もちろん、被疑者は逮捕されるに至った犯罪について具体的に尋問されるが、それ以外の犯罪についても具体的に又は一般的に尋問すべきである。
  • 盗品を買う者を知らないか。
  • 銃器販売人を知らないか。
  • 最近発生した石油スタンド強盗について何か知らないか。

 巡査の安全確保のためにも、正確かつタイムリーな情報収集が必要である。巡査は現場に関する最新かつ正確な情報を知って、できる限り安全にパトロール、犯罪捜査、被疑者の逮捕を行うこと。巡査はこれらの情報を次の方法で入手できる。

  • 分署の犯罪情報センター。ここでは最新犯罪の詳細、犯罪手口(パターン)の情報、指名手配者の名簿が入手できる。
  • 巡査部長の伝言板に閉じられている通達や通知。班長は点呼に際してこれらの情報を読み上げ、部下の巡査と討論すべきである。
  • 犯罪環境や指名手配人に関して、分署指揮官、分署刑事、防犯対策(Anti-Crimepersonnel)は、点呼時に巡査に徹底する。

 注意事項として、パトロール巡査、機動隊巡査及び刑事は相互に情報交換をしておくこと。私服巡査と制服巡査同士も情報を繰返し交換すること。私服警官が制服警官から情報を求めるだけで彼らに情報を提供しないと、制服巡査は私服巡査に情報を提供しなくなる。刑事が被疑者を追跡しているとき、パトロール巡査にその情報を提供する方がよい場合が多い。パトロール巡査が被疑者情報を知ることで、彼等が被疑者や目撃者を発見することがあるからだ。

 一般人の安全のためにも、犯罪手口や犯罪環境について一般に周知することが必要である。そうすれば一般からの警察に対する情報提供も期待できる。連続強姦犯、連続殺人犯、同一手口窃盗犯その他の繰返し犯罪は、一般からの情報がきっかけとなって逮捕されることが少なくない。新聞、ラジオやテレビへ犯罪情報や被疑者の人相書等を提供することも、一般人への犯罪情報提供の重要な手段である。

●適切かつ迅速な犯罪分析は犯罪の減少に重要である。適切な犯罪分析とは次の通りだ。

  • 犯罪手口の迅速な識別。
  • 犯罪手口情報、被疑者および使用車両特徴等を、パトロール警官、刑事、及び必要な場合には一般に迅速に配布すること。 手口情報は迅速かつ広範に通知する必要がある。大部分の悪質犯罪は繰返し犯により引き起こされることが多い。暴力犯罪の発生は比較的に少ないとはいえ、これら犯罪者は同じ手口の犯罪を何度も繰り返して実行する傾向がある。

●指揮官は犯罪情報に関し次の責任を有する。

  • 情報の継続的収集。
  • 情報を迅速かつ正確に分析。
  • 本部内部での、及び必要に応じて一般への、犯罪情報の配布。

●犯罪傾向と手口を分析することは次の理由から極めて重要である。すなわち:「犯罪を予測できれば防ぐことができる。」 ここでもチームワークは重要だ。分署署長、犯罪分析官、刑事、班長及び巡査は、全員共同で情報収集と情報配布を効果的に行うこと。

「コムスタット」システムは、警察本部内に正確でタイムリーな情報を提供する手段である。

2-2.迅速な人員配置

 いったん犯罪情報を入手したら、分署署長は犯罪環境に対処するために、指揮下の陣容をできるだけ迅速に配置する必要がある。この陣容には次の警官が含まれる。

  • 制服パトロール警官
  • 私服パトロール警官
  • 分署刑事チーム

 署長は、さらに必要に応じて、本部内の他部署職員の協力も迅速に確保すること。他部署としては次の部署が考えられる。

  • 麻薬部門。アパート内の麻薬売買捜査。
  • 自動車犯罪部門。自動車窃盗団の捜査。
  • 鉄道部門。地下鉄内でのすり窃盗団への対処。
  • 団地部門(HousingBureau)。団地開発地域
  • における犯罪の防止。
  • 街頭犯罪班。同一手口犯の逮捕支援。

 チームワークは成功の鍵である。本部は巨大なチームであるが、分署長はクウォーターバックに相当する。署長は分署職員の努力と分署外職員の努力を調整することでゲームの指揮をとるのだ。時には特定の問題に対処するために、分署署長は他の分署からの職員と統合タスク・フォースを編成することもある。分署長は、特定問題の解決のために警察外部の部局と共同作業することも考慮する必要がある。それらの部署は次のとおり。

  • 地方検事局
  • 連邦検事局
  • 地方議会事務局(非行少年の起訴)
  • 連邦の法執行機関(FBI,ATF,DEA,税関等)
  • 州・地方自治体の法執行機関(州警察、港湾警察、保護観察局、仮出獄事務所)

  • 社会福祉部局
    分署長はコミュニティとも協同する必要がある。コミュニティは以下の項目に関する重要な拠点である。
  • 犯罪情報(犯罪の発生場所は?だれが?)
  • 支援(警察官との協力と警察への心理的応援)
  • フィードバック(警察の戦略が機能しているかどうか、コミュニティが署長や警官に意見を伝える。)

 「コムスタット」が提供する週間犯罪統計を利用して、警察本部は警備陣容が迅速に配備されたかどうかを判断することができる。

2-3.有効な戦術

「計画が達成できないのは計画自体が失敗だからなのだ。」

 署長は犯罪に対処するために、明確で有効な戦術を展開する必要がある。これらの戦術は同時に弾力的でないといけない。換言すると署長は犯罪環境が変化した場合には、その計画を変更できるように用意すべきである。

 有効な戦術の鍵は、特定の問題に対しては重点的かつ具体的な陣容配備を行うことにある。行き当たりばったりのパトロールからは、行き当たりばったりの結果しか得られない。

具体的な戦略を例示すると:

  • 地域を制服巡査で飽和させる。
  • 地域を私服巡査で飽和させる。
  • 盗難車を発見するためにチェックポイントを設定する。
  • 麻薬犯罪に対し買って逮捕(BuyandBust)する作戦を展開する。
  • 私服巡査・刑事による地域監視を展開する。
  • 盗品を売買する故売人を逮捕するために、高額買取り(Sting)作戦を展開する。
  • ビル内の垂直パトロールを定期的に実行する。
  • 不正事業を閉鎖させるために、不法妨害防止法(NuisanceAbatementLaw)を適用。
  • 不正事業に対抗するため、地主・家主と協力して借家人立退訴訟手続きを起こす。
  • 特定の休日に発生しやすい問題を防止するための具体的な対応計画(ハロウィーン休日の破壊行為の防止、大晦日の飲酒運転のチェックポイント設置)を事前に設定し、これらの計画を事前に一般に周知させる。

 「コムスタット」システムは、警察本部が戦術展開を必要とする地域の選定、あるいは実施された戦術の進展状況把握に必要な情報を提供する。

2-4.厳格なフォローアップと評価

 犯罪に対する適切な情報の収集、犯罪に対処するための警察陣容の迅速な展開、及び犯罪に対処するための有効な戦術を設定するだけでは十分ではない。署長は絶えず何が実施されているかをフォローアップし、その結果を評価しなければならない。そして結果が期待通りでなければ、何かを変更せねばならないのだ。 分署長は戦略や陣容配備について、次のような方法でフォローアップする。

  • 分署の外に出て管轄地域を巡視し、犯罪環境の実態を把握する。
  • 犯罪発生報告(ClaimReport)に毎日目を通す。
  • 分署が作成する発砲・強姦犯罪に関する異常発生報告、その他の重大犯罪報告に毎日目を通す。
  • 分署職員が作成する犯罪解析資料(犯罪発生地図、犯罪手口報告、その他の資料)に目を通す。
  • 制服の警部補、巡査部長及び巡査と犯罪環境について話し合う。

  • 機動隊の幹部や巡査と、犯罪環境について話し合う。
  • 分署の刑事係長、班長や刑事と犯罪環境や具体的な事件について話し合う。
  • 分署、区及び市全域のコンプスタット報告に毎週目を通し、自分署の業績評価並びに他分署との業績比較を行う。
  • 犯罪戦略会議(コムスタット会議)では、警察本部全体としてのフォローアップ資料が提供される。この犯罪戦略会議で、本部幹部は次の討論を行う。

  • 出席している各分署の犯罪統計に目を通す。
  • 現在関心のある事件、犯罪手口、あるいは要注意状況について質問する。
  • 特定の事件に対処するため、あるいは特定の犯罪手口や犯罪状況に対応するために、どのような対策を講じたかを記載した報告書又は情報を、各分署に対して本部上層部に提出するように要請する。
  • 以上の会議で指摘された事件、犯罪手口又は犯罪状況に関して、フォローアップ質問を行う。
    注:この会議では議事録をとり、会議で討議された事件、犯罪手口等に関し、別途、必要なフォローアップ質問の作成や、本部から求められた報告書作成に利用する。

 「コムスタット」システムは厳格なフォローアップと評価を進めるのに不可欠なツールである。これによって本部幹部や分署署長は業績結果を毎週見ることができ、その情報に基づいて戦術や陣容配置を修正できる。犯罪減少は継続的な過程であって、一度限りの出来事ではない。常に上記の4ステップを適用して、犯罪減少の過程を進めること。

3.協力の必要性

大組織における二大問題として

  • 組織各部門間のコミュニケーションの欠如
  • 組織各部門間の調整の欠如

が上げられる。 これらの問題発生を防ぐために、各階層における指揮官は他部局とよく話し合い協働することが必要である。一例として盗難や強姦事件に対処するには:

  • 犯罪分析官は犯罪に関する情報と報告をパトロールユニット及び刑事ユニットから入手し、その分析結果を各ユニットに迅速に戻す。
  • 私服及び制服パトロール・ユニットは相互に、また刑事ユニットともよく話し合い、だれが、何を、いつ、どこで分担するのかについて合意する必要がある。この場合特に次の点に合意が必要だ。
  • 作戦の部分ごとの責任の所在
  • 個別訪問(Canvass)はだれが分担するのか。どの地域を?
  • 監視はだれが分担するのか。どの地域を?

  • 被疑者が発見され又は特定された場合、どのように逮捕するのか。
  • 現場において、異なるユニット間の情報連絡をどうするのか。
  • 各ユニット/部局間で合意事項を文書化しておくと、業務の調整に役立つことがある。関係者全員が合意事項を理解し、またそれぞれの責任について明確になるからだ。問題が生じた場合にも、関係ユニットが文書を参照しながら問題を調整できる。文書化することで、全員の注意を引き付けることができる。
  • 指揮官は作戦に関連した全ユニットがそれぞれの貢献に対して栄誉を受けるよう努力すること。栄誉の共有こそが協同作戦の活力の源だ。例えば、パトロール巡査が重要な情報を刑事に提供しても栄誉を受けられないと感じているとしよう。あるいは刑事が、自分が見つけた指名手配者をパトロール巡査が逮捕した場合には、その捜査活動に対して栄誉を受けられないと感じているとしよう。いずれの場合にもパトロール・ユニットと刑事ユニット相互の意志疎通は円滑にできないだろうし、チームとして有効に共同作戦が進まないだろう。 全員が記憶すべきことは「チーム」に「俺」はないということだ。
4.コムスタット:その設立の背景

 最近の警察本部の成功の大部分は次の4点を設定したからだといえる。

  • 犯罪戦略会議(コムスタット会議)
  • 特定の犯罪又は犯罪環境をターゲットとする重点戦略
  • 分署署長に、分署管内の犯罪や混乱に対応する権限を付与したこと。
  • 犯罪減少に向けて、分署署長にその結果の責任を持たせたこと。
    この4項目が有効に機能しだしたのはここ数年のことである。1990年の始めには警察本部の犯罪への闘いはまた散発的であった。具体的には次のとおり。
  • 犯罪統計の収集には時間がかかり、最新の犯罪統計が何カ月も前のものという状態だった。本部の幹部はニューヨーク市内の最新の犯罪状況を知ることはできず、分署署長も管轄内の最新の犯罪統計を入手することができなかった。

  • 分署署長は、本部の集中管理に邪魔されていた。署長には管轄内における、管轄の状況に適した犯罪対策計画を立案し実行するための広い権限を付与されていなかった。
  • 署長には犯罪に弾力的かつ有効に対処する事を期待されていなかった。署長は自分の戦闘努力が成功しても評価される訳でなく、自分署の犯罪統計が常に見直されていなかった。
    コムスタット・プロセスの立ち上がりとともに、警察本部の体質改善が推進された。
  • 分署署長には、自分署管轄内の管理についてより自由が与えられた。
  • 分署署長は、管轄内の犯罪の減少について責任を負うこととなった。
  • 警察本部は、地域の警察行政戦略を再編し、分署署長に問題の解決と具体的な成果の達成に主要な責任持たせることとした。

  • 警察本部はコンピュータ・システムを開発して、犯罪統計のコンピュータによる解析、分署署長のリーダーシップ効果の記録、並びに本部としての犯罪対策の立案に利用することとした。(このシステムはコムスタットと呼ばれるが、これは統計分析のためのプログラム名をそのまま使ったもの。)
  • 定期的に犯罪戦略会議(コムスタット会議)が開催され、そこで各分署署長はそれぞれの犯罪環境を討議するが、なかでも最も重要なことは犯罪への対処として何を計画しているかを討議しだしたことである。この会議によって、本部幹部と現場指揮官との間の指揮連鎖が短縮され、本部幹部は現場の部下からタイムリーな情報を直接に入手できるようになった。
  • 緊急性を要する特定の犯罪や犯罪環境に対処するための、具体的かつ全部門的な戦略が展開できるようになった。警察本部は、もはや犯罪が発生するのをただ待つのではなく、より積極的となり問題解決型へと転換した。

    (第一部了)
第二部へ

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