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現在の階層 A・P総研サイト/TV・マスコミ関連/1999/10/28


ニューヨーク市警レポート2.

4.犯罪戦略会議

 犯罪戦略会議の基本概念は極めて簡単だ。すなわち、分署長は自分の管轄区域内で発生した犯罪について熟知し、それを減らすために常に努力することにある。

 市警本部の76カ所の分署は「パトロール管区」(PatrolBorough)と呼ぶ8カ所の地域司令(Lo-cal Command)の指揮下に入る。毎週各分署は、コムスタット統計班が提供するコンピュータ画面に、犯罪統計を入力する。分署はこの犯罪統計情報を所属するパトロール管区に送付する。パトロール管区は管区内の分署から送付された情報を総括して、コムスタット統計班に送付する。コムスタット統計班はこの情報を解析し、コムスタット報告書を作成する。市警本部長官その他の幹部職員はコムスタット報告を検討するが、この報告は同時にすべてのパトロール管区司令及び分署長にも送付される。

 毎週、市警本部は犯罪戦略会議を2回開催する。(これはコムスタット会議と呼ばれる。)これらの会議は警察本部内の指揮・統制センターで開催されるが、この場所は市警が重要な案件や緊急事態を統括するために使用するもので、コンピュータを装備した状況室(SituationRoom)である。会議の出席者は市警本部長官、上席副長官、副長官、各部部長、並びに各部の幹部職員である。(これに加えてパトロール管区でもそれぞれに犯罪戦略会議が開催される。)

 毎週二か所のパトロール管区が選ばれて、本部の犯罪戦略会議に出席する。(会議は通常水曜日と金曜日、午前7時から11時まで開かれる。)パトロール管区の選択について一定の基準はなく、その週になるまで、パトロール管区に出席の通知はない。選ばれたパトロール管区からは、分署長及び各実務班指揮官(OperationalUnitCommander)が出席する。

 出席した指揮官は、本部長官、副長官、その他各部部長からプレゼンテーションを求められ又は質問がなされる。分署長は、管轄地域内での犯罪行為や犯罪環境について、並びにそれらに対処するためどのような具体的なステップを講じているのかについて、プレゼンテーションと討議を求められる。刑事班、組織犯罪対策局(麻薬及び組織犯罪担当)、鉄道警察・団地局(TransportationandHousing Bureau)の指揮官及び幹部も、犯罪傾向や犯罪手口、その他特記事項についてのプレゼンテーションを求められる。

 各指揮官は管轄区域あるいは責任分野における犯罪について熟知していることを求めらるが、それより大事なこととして、それらの犯罪に対して何かを実行することが求められているのだ。コムスタット会議は問題提起とともに解決に重点が置かれる場所である。成功物語と新しいアイデアの発表に特長がある。

 8管区からの各部代表者はこの会議に出席して議事を記録し、それぞれの司令に討議事項、犯罪傾向及び手口、新しい試み等について報告する。コムスタット会議は警察本部の各責任者が各地の中間管理者を知り、警察本部としての業績改善を達成するのに必要な彼らの指揮者としてのリーダーシップを評価できるよい機会でもある。

5.コムスタットとコンピュータによる犯罪解析

5-1.コンピュータ統計

 毎週、各分署は市警本部のコムスタット班主任あてに犯罪コンピュータ統計を送付する。この統計には時間別、日別、地域別に分類された

  • 主要7犯罪の苦情(Complaint)件数
  • 主要7犯罪の逮捕件数
  • 発砲事件数
  • 犯罪犠牲者数
  • 召喚状発行件数
    が含まれる。

 この統計はコンピュータにより解析・編集され、週間コムスタット報告として発行される。このコムスタット報告は、犯罪件数、逮捕件数及び召喚状発行件数について

  • 今週累計
  • 直前28日累計
  • 年間累計を集計し、前年同期実績と対比する。さらにコムスタット統計は犯罪統計を

  • 分署別
  • パトロール管区別
  • 全市域

について比較する。この週間コムスタット統計により市警本部の幹部は、分署別、パトロール管区別、及び全市域についての犯罪・逮捕の傾向を知ることができ、犯罪減少に必要な処置を決定するのに重要な資料として利用する。

5-2.電子ピン地図

 マップインフォ(地図情報)その他のプログラムを利用して、コムスタット班は定期的に各分署ごとの犯罪発生、逮捕及び発砲事件の件数を、電子的にピン地図として表示する。これらのピン地図上には分署管轄区域の地図が表示され、問題の犯罪や事件が別個の色で発生位置に表示される。電子ピン地図には下記の項目等がコンピュータ画面に表示されるほか、カラー印刷も可能である。

  • 犯罪が群発している問題地点(HotSpot)
  • 一日の時間帯別の犯罪発生状況
  • 各種犯罪データを同時に表示(盗難・発砲・殺人など)
  • 執行状況(例えば、麻薬犯罪の発生と逮捕を別の色で表示)電子ピン地図は、犯罪戦略会議が開催される指揮・統制センター内の大型オーバーヘッド・コンピュータ画面で表示することができる。

5-3.時間別/日別の犯罪発生頻度

 ある犯罪が一日の時間別や週間の日別に発生する頻度も、犯罪統計データをマイクロソフト社のエクセルを使用して「時間別/日別頻度」画面に作成し、一般グラフ、棒グラフあるいは円グラフのどの形式でも表示できる。

5-4.突発(Spike)報告

 定期的な週間コムスタット報告に加えて、コムスタット班は「突発」報告を作成する。この報告は犯罪が急増(突発)しつつある分署をリストアップするものだ。犯罪の急増後、コムスタット・システムが直ちにその事を指摘できることがコンピュータ統計解析の重要な利点である。いったん「突発」が認識されると、市警本部の幹部によりそれを是正するための措置が講じられる。必要に応じては「突発」会議が開催され、犯罪が急増している分署のの分署長は分署管轄内での犯罪環境等に関してプレゼンテーションを求められ、質疑応答が行われることがある。

5-5.指揮官プロファイル報告

 「指揮官プロファイル報告」は、上級管理職にとって人事異動や人事管理上で欠くことのできない重要なツールである。「プロファイル」とは一片の紙に記された、指揮官の統計的な「スナップショット(速写し)」であるといえる。これらコンピュータ化された「プロファイル」は下記部署に所属する指揮官全員について作成される。

  • パトロール管区
  • 分署
  • 刑事班
  • 分署に駐在する特別捜査班
    全てのプロファイルには各指揮官について下記事項が記録される。

  • 本人の写真と代位者(ExecutiveOfficer)の写真
  • 現階級在位年数
  • 現職任命年月
  • 教育及び特殊訓練
  • 直近の業績評価
  • 前職名
    全てのプロファイルには次の事項も記録される。・部下の残業時間

  • 所管する車両の事故件数
  • 病欠率及び勤務中の傷害率
  • 部下に対する民間からの苦情申し立て件数
  • 管轄区域の後任該当者(ElectedOfficials)氏名
  • 他部局における本人との同資格者氏名
    分署長及びパトロール管区司令については下記事項を追加記録する。

  • コミュニティの人種構成
  • 警官の配置人員(制服、私服、その他別)
  • 家庭内暴力及び未発見逃亡者数(UnfoundedRadioRuns)
  • 召喚状統計
    捜査班指揮官については下記事項を追加記録する。
  • 捜査中事件(Caseload)及び解決済事件(Ca
    seClearance)の情報

  • 逮捕者からの情報提供件数
  • 捜査令状の執行件数
  • 秘密情報提供者の人数
  • 犯罪事件で確認された共犯者数
  • 犯罪事件で逮捕された共犯者数
    分署麻薬捜査班指揮官のプロファイルには下記事項を追加する。

  • 重犯罪、軽犯罪、暴行の逮捕者数
  • 情報提供者の極秘登録人数
  • 長期間にわたって実行された囮捜査(BuyOperation)件数
  • 麻薬事件に関する情報件数、捜査報告件数及び解決件数
  • 不法妨害防止法の対象となる場所(NuisanceAbatementLocations)の件数
    確認済み件数
    執行中の件数
    解決済みの件数
6.総括

●コムスタットの全過程を通じ犯罪減少の鍵は統計」ではなく「リーダーシップ」である。

●確実かつ継続的に犯罪を減少するために、市警本部は「犯罪減少の4ステップ」を導入した。

  • 正確でタイムリーな情報収集(どのような犯罪が発生?何時?どこで?なぜ?)
  • 迅速な人員配置(犯罪を発見したら直ちに人的資源を配置する)
  • 有効な戦術(犯罪に対処するための戦術と、必要に応じてその戦術を変更する)
  • 厳格なフォローアップと評価(結果を分析して、計画が有効であったか評価する)

●組織内の各部署の密接な協力が決定的に重要である。各部局、各班は相互に協議し協力する必要がある。チームワークは犯罪減少に不可欠である。

●コムスタットの有効性実現には、分署長に権限を付与したこと、そして分署区域内の犯罪減少に分署長が責任を負うとしたことが、二つの重要なキーとなった。

●毎週、コムスタット報告により犯罪統計が収集され解析された。また指揮官プロファイルも定期的に作成された。

●犯罪環境、犯罪事件及びそれらの解決のため、毎週2回犯罪戦略会議が開催・討議された。

●コムスタット報告及び犯罪戦略会議により、市警本部各レベルの幹部及び指揮者は犯罪減少戦略がいかに機能しているかを知り、必要に応じてそれを変更することができた。


7.まとめ

 コムスタットのプロセスはニューヨーク市警が犯罪を減少する上で極めて有効に機能した。このプロセスではコンピュータと統計を利用したが、コムスタットはコンピュータ関するものではなく、市民の命に関するものなのだ。犯罪統計は決して単なる数字ではない。それは犯罪の犠牲となった市民の命を表すものなのだ。犯罪統計が低いことはすなわち犯罪の犠牲者が少ないことと知るべきだ。

 ニューヨーク市警本部の最終目標は決して犯罪統計を低めることではない。我々の目標は「安全なニューヨーク」を作り出すことなのだ。今回コムスタットのプロセスを簡略に紹介することが、関係者全員にとって、一般市民に対するそれぞれの部署の目標を達成するのに役立つものとなることを期待している。(終)


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