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現在の階層 A・P総研サイト/一般情報一覧 -1999年度/一般ニュース 06/30

1999/06/30発信:一般向けニュース
アメリカセキュリティー視察ツアー・レポート その1

 今回、アメリカセキュリティーの現状視察ということで、ニューヨーク(以下NY)とラスベガスを見て回った。NYでは殺人事件が過去5年間で67%減少し、ピーク時だった80年代後半の2137件から600件台へと1964年当時の水準にまで落ち、『犯罪都市」から『安全な都市』へと脱皮を図る同市の治安維持を学ぶべく、日本人として初めて色々な場所を視察することが出来た。この視察の模様は、25日金曜日の『アメリカ読売』にも掲載された。 まずは、その初日に行った『ライカーズアイランド拘置所&刑務所』(以下ライカーズ)の模様をレポートしよう。

 まずライカーズのある場所だが、名前からして島であることが分かる。 マンハッタン島の東を流れているのが、イーストリバーという川なのだが、その上流に『ビューノブリッジ』と言う橋が1本だけかかっている小さな島が有る。島の直ぐ近くには『ラガーディア空港』がある。 そこがこのライカーズだ。

 島の入り口の橋には検問所が有り、来訪者の徹底的チェックを行っている。車で来た場合には、この検問所の横のパーキングに駐車し、バスで入島しなければならない。 我々は写真1で紹介しているNY市警マークマクガイアの案内で、車のまま入島する事が出来た。 島の周りには有刺鉄線が張り巡らされ、数万ボルトの電流が流されている。

 拘置所内は、16〜18歳の少年と大人とに別れている。ちなみに制服の色は少年がベージュで、大人が緑となっている。 服役日数の平均は、刑務所約30日拘置所約45日との事だ。 10カ所有る他の刑務所で対処できないときにここに入るらしい。中は九つの拘置所と一つの刑務所(一年間以下の短期間者)になっている。 一年間に13万人が出入りし、常時一万六千から一万八千人が入っている。 島内は歩くことは禁止され、必ず車で移動しなければならない。但し、警備には自転車を使ったりしている。

 警備員は必ず緊急連絡用アラームを携帯している。このアラームには個別のIDが登録されているために、誰のアラームが警報を発したかが分かる。このアラームや、刑務所内での緊急連絡が入ると、ありとあらゆる所に取り付けられている赤色灯が点滅を始める。 何と!!我々が刑務所内を視察しているときにも、アラームが鳴り赤色灯が回転をし始めた! 「我々が来ているので暴動が起こったか!」大袈裟ではなく、一同に緊張が走った。

 我々も通路と通路を遮る鉄柵で囲まれた場所から動くことを禁止された。囚人達は直ぐに壁際にやられ、警報がやむまで一切動くことが出来ない。何のことはない、一日に一度や二度はある誤作動とのことで安心したが、警備員には誰一人として、誤作動かもしれないなどとの甘えた動きは感じられなかった。どちらにしても一瞬ひやりとしたことは確かだ。 刑務所内が撮影禁止だったことは残念だが、少しでも皆様に御分かり頂けただろうか。

 最初に入ったときは、小田氏がガーディアン・エンジェルスの制服である、Tシャツと赤いべレー帽を身に付けていたので、ブーイングを我々に浴びせかけられたり、囚人と通路ですれ違うときには、もっと端を歩くように注意されたりと緊張感は否が応でも高まった。シャワー室から食堂まで、丁寧に案内をしていただいた職員の皆様には、この場を借りてお礼を申し上げる。

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ライカーズアイランド拘置所所長室にて

右から茨城県、(株)安全警備関社長、今回の主催、(株)サン・クレセント皆藤社長、私、中野耕平。北海道、(株)太陽グループ東原社長。北海道、(株)ビクトリア観光松谷社長。椅子に座っているのが、所長ルース・フィゲロア(女性です)。

先の(株)安全警備の関社長と同行した、同社吉田常務(株)日立製作所デジタルメディアシステム事業部佐藤技師。NY市警のマークマクガイア。今回色々と案内や通訳などで活躍していただいた、ガーディアン・エンジェルス・ジャパン小田代表。ライカーズのサミーソーサ


画像 副所長フランクスクランティと熱弁中の小田氏。

画像 鎮圧のための武器。ショットガンタイプには、何種類もの催涙ガスを装着できる。
画像 もう一枚の写真も催涙ガスだ。1回で百万人を四十分間も眠らせることが出来る。 ただし、99%使うものではなく、威嚇のための武器とのことだ。

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刑務所に入った囚人は、まるで軍隊の訓練のような特訓を受ける。 拘置所はコンクリートで出来た一人一部屋のところだが、刑務所の方は、テントで出来た体育館のような物凄く大きな所で皆が一緒に寝泊まりをしている。しかし、冷暖房は行き届いているし、食事は事欠かないために外で暮らしているところより居心地が良いために、出獄しても直ぐに舞い戻ってくる奴も少なくないとのことだ。


画像 イーストリバーを挟んだ向こう岸にはラガーディア空港が見える。その川では水難訓練が行われている。もしもの時に備え水難訓練が行われていた。当然、川に逃げ込んだ囚人を取り押さえるときも想定しているのだろう。

画像 有刺鉄線が張り巡らされ、数万ボルトの電流が流されている。

END.

 

1999/07/10発信:一般向けニュース
アメリカセキュリティー視察ツアー・レポート その2

ラジオ放送局WABC内にて。

 ガーディアン・エンジェルス創設者『カーティス・スリワ』氏にお話を聞く。右の、日本ガーディアン・エンジェルス代表『小田啓二』氏に通訳をしていただいた。カーティスは14歳の時、火事場から人を救って、当時のニクソン大統領から、直接表彰状と握手をしていただいている。その時の新聞記事がニューヨーク本部に掛けられていた。その後も、マクドナルドの店長をしながら、76年9月から従業員たちと共にニューョークの街角でゴミ拾いを始めた。これがガーディアンの前身=ロック・プリゲードです。その当時、地下鉄専用の『メトロポリス』がいたのだが、なんとコッチ市長が「夜7時以降は地下鉄にポリスを乗せない」との愚策を行った。喜んだのは当然犯罪者たちだけだった。市民の安全よりもポリスの安全が優先ということなのだろうか。そして、カーティスは地域社会の「平和と安全」を守るために、まずは地下鉄を警備して巡るようになった。

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 ガーディアンが誕生したのは1979年2月13日。ニューヨーク市サウスブロンクスにおいて、カーティスとその仲間たち(多くはマクドの従業員たち)が、わずか13人で活動を開始した。そして、今では「北アメリカ/ヨーロッパ/オセアニア」など全世界の50都市で、5000人を越えるメンバーが活動している。しかし、活動当初のガーディアンは、リサイクルやゴミ拾いのように市や市民からのサポートを得ることは出来なかった。新手のギャングと思われてしまったのだ。

 しかも、当初18才のスタッフが路地を曲がった瞬間、暴漢にナイフで襲われ頭を刺されてしまった。何とか一命を取り留めることができ、不幸中の幸いだったのだが、残念ながら立て続けに四人も殺されてしまった。皆十〜二十代の若者たちだった。現在までに殉職者は五名である。このような事が有ったので、より周りからの軋轢が強まってしまった。それでも、毎晩地下鉄を見て巡った。約2年間かかって周りから認知されるようになったのだが、市長はそれでも反対だった。

 そして、当時のニューヨーク一番の繁華街『タイムズスクエア』では、安いドラッグ(クラック)を売る売人と売春婦で溢れ、周りのレストランはジャンキーの集まりと化していた。実は、60年代のニューヨークの街は非常に安全な街だったのだ。しかし、ベトナム戦争が、人もニューヨークの街も変えてしまったのだ。あまりの治安の悪さに、続々と店を閉めたレストランのオーナーたちからガーディアンに依頼が有るが、市長のコッチはまたしても反対をする。しかし、オーナーたちはガーディアンがいないと店を開けることが出来ないと強く主張し、ガーディアンがタイムズスクエアを中心に見巡りを始める。ガーディアンは自警団ではない。自警団とは相手を傷つけてでも自分達を守る集団のことである。ガーディアンは相手を倒すために拳銃や道具を使うことはない。但し、身を守るために徹底した訓練を行っている。

 1989年には、最高の2137件の殺人事件が起こったニューヨークの街を、素手で守ろうとしたわけである。コッチ市長から新たに黒人市長ディンキンスになって、やっとガーディアンに対する風当たりは少しだが良くなった。そして、92年にジュリアーニ市長に代わり、ついにオフィシャルサポートを市から受けることとなった。最悪の街から、最良の街へと変貌していく。今では、日本やイタリアにも支部ができるほどになり(設立時には、小田氏がミラノまで出かけた)、皆から認知される団体となったのだが、カーティスはなんと今までに72回も逮捕されている。これは、マフィアからの嫌がらせであったり、市が警察が、ウザったい存在と思っていたことから起きたことである。

 しかし、今ではパスポートを持たないでも外国を往来できるまでに認知されているのだ。その彼も、92年にはマフィアの刺客の手によって、腹に拳銃の玉を5発も打ち込まれているのだ。奇跡的に一命を取り留めたカーティスだが、約一年間は腹に袋を取り付けたままの生活だった。ロンドンに行ったときも、タクシーに乗ろうとしたところを暴漢に襲われ、ドライバーで左首筋を刺されたが、この時も一命を取り留めている。カーティス曰く「私は神に守られている」とのことだった。ところで、やっと腹に取り付けた袋を外したカーティスだったが、なんと体に異変が起きてしまったのだ。まるで胃拡張にでもなってしまったかのように、物凄い食欲となり、ホットドックの早ぐい競走では優勝してしまうまでになったのだ。

 その彼も、当初ラジオ番組などで討論会に頻繁に出演し、ガーディアンの必然性を説いたりしたのだが、とにかく弁の立つ彼は次第に人気が出るようになり、そのおかげでラジオのパーソナリティをする事となる。だから今回の彼の話を聞く場所となったのは、なんとスポーツのメッカ『マジソン・スクエア・ガーデン』の隣に有るWABC77というラジオ局の中だったのだ。

 ちなみにガーディアンはボランティア団体なので給料は支払われない。全員仕事を持った上で協力しているのだ。カーティスは仲々の高給取りらしい。我々との話を終えると直ぐに専属のスタジオに入り、放送が始まった。毎日夜六時からの生討論番組だ。まず、「今日は、これとこれについて皆の意見を聞かせてくれ!イェ〜イ!」と言っていたかどうかは、分からないが、たぶんそんな乗りだと思う。生討論番組と言っても、実際には放送をするまでに5〜6秒程度のタイムラグが有り、不適切な発言を流さないようにしている。今では街を歩いていると、色々な人達から握手を求められるほどの超人気者である。

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 ニューヨーク本部にて。スタッフは愛称で呼ばれている。現在のニューヨーク本部のリーダーを務めている彼は『ハリウッド』と呼ばれている。聞き忘れたが、もしかして小田氏の愛称は『サムライ』だったりして。たぶん当たっていると思うが、間違っていたら、小田さん御免なさい。ちなみに、ハリウッドの背中には天使のように羽が生えている……わけではなく、ガーディアンのシンボルマークが上手く重なっただけのことである、あしからず。

1999/07/21発信:一般向けニュース
アメリカセキュリティー視察ツアー・レポート その3

『NYPD』

NYPD:ニューヨーク・ポリス・デパートメントの略であり、ニューヨーク市警のことである。コミュニティ部門で十六年間務めた、ジョン・ローアン氏に話を聞いた。NYPDは153年もの歴史が有り、アメリカでは一番古く、模範モデルとされている。だが70年代に、28,000人から23,000人と2年間に5,000人もが、予算カットのためにリストラされてしまったために、その後、犯罪は急増していく。どんな犯罪でも立件するプロセスは同じ手間がかかるために、小さな犯罪を見逃し、おのずと大きな犯罪のみを取り締まる結果となっていった。

 街には売春婦とドラッグの売人が溢れ、その金をピンはねするマフィアなどが、三年で倍々ゲームのように増えていった。その当時、ハーバード大学のキリング氏が、『ブロークン・ウインドゥ(割られたガラス)』と言う、理論を発表した。簡単に説明しよう。「町内で一枚のガラスが割られていたら、直ぐに対処しないと町中の全てのガラスが割られてしまう」と言うことである。その為には、一枚のガラスが割られたときに早急に対応しなければならず、その答えが、『ゼロ・トーレランス』(シビアな裁量)と言う、理論である。この二つの理論を実行するために、『コムスタット・コンピューター・システム』が考えられた。

 『コムスタット』は、民間企業から学んだ情報システムを元に作られたシステムである。会議は我々が講義を聴いたこの部屋で5週間毎に行われ、七六分署から各々専任されたキャプテンが討論していく。ミーティング自体は二週間に一度行われている。本部長に、犯罪に対してどの様に対処したかを説明する。対処の仕方を失敗したり分からなかったりすると、皆でどの様にすべきかを話し合う。そして、次の5週間後にその結果を再度話し合う。話し合いで出た案は、その場で本部長によって決裁される。一々稟議を上げて数週間、あるいは数カ月も決裁が出るまでに時間がかかる、どこかの国とは大違いである。何も案が出なかったり、次の5週間後に対処できなかったキャプテンは、降ろされることとなる。この時に収集した情報をデーターベース化し、事前に犯罪発生を予測し防止するのである。

 例えばジョン・ローアンは、まず最初に警察署の前に書かれている落書きを消すことを命じられた。20人掛かりで、三日で消した。そして落書きのアイデンティティを確かめ、情報化しコンピューターに打ち込んだ。落書きには必ず『タグ』(服などにも付いている商標のような物)が書かれていた。その為に、落書きをした犯人を捕まえることは簡単だった。だが、実際には逮捕せず、「今度同じようなことをしたら逮捕し、刑務所へ送り込んでやる!」と、強いメッセージを伝えただけである。その結果、94%も落書きを減らすことに成功したのだ。

その他、代表する三つの犯罪について説明を聞いた。

  1. 麻薬
    麻薬の販売元は、ハーレムの北と、クィーン、ブルックリンの三カ所にあった。その三箇所を徹底的に見回り、その場所から追い出すことに成功し、激減することが出来た。

  2. ピストル
    ピストルは自己防衛のためなら持っても良いが、特別本部の35人が、誰が買ったかを徹底的に調べ上げている。ある時、フロリダで154丁のマシンガンを買った不動産屋がいるとの情報が入った。その情報から三日後、ワゴン車にマシンガンを満載して帰ってきたところを逮捕した。

  3. 家庭内暴力
    家庭内暴力(ドメスティック・バイオレンス)では、年間120件位の殺人事件が起きている。16年前には、被害者本人が告発しなくとも、裁判にかけて判決を下すことが出来たが今では出来ない。七六分署の全てに、一人はドメスティック・バイオレンス・カウンセラーがいて、色々な相談を受けている。

 日本では難しいらしいが、ある家庭で暴力が行われているとの一般情報が寄せられると、必ず三回は訪ね、実態を調べるとのことだ。『コムスタット・コンピューター・システム』については、ジョン・ローアンから送っていただいた資料を、日本セキュリティー研究所で翻訳していただいている。担当者は、「これは凄いシステムだ!」と、興奮しているとのこと。近々皆様にもお知らせすることが出来るだろう。ここの会議室では、一年に4回『アップル・アソシエーション』という、ニューヨーク七六分署と、民間警備会社で出来た組合の会議も行われている。『アップル・アソシエーション』は、世界貿易センターの爆発事故があった事件の直後(1978年)に設立した。入会金などはいらない。当初は30社だったが、今では1,300社になっている。ここでは、ファーストネームで呼び合うほどフランクな雰囲気で、我々が訪れた数日前にも、450社が集まってミーティングを行っている。

 会議の席にはガス会社や電話会社なども呼んでセミナーを行っている。情報交換はFAXを使っているが、7月からはEメールで写真などの交換も始める。各々が特別な無線機を持って連絡を取り合い、110番よりも素早いレスポンスを誇っている。警察OBが多いのでコミュニケーションが上手くいっているとのことだ。NYPDの地下室には、射撃訓練室とレクチャールームがある。警察官は一年に二回は必修科目を受講し、成績次第でIDカードの色が変わる。昔はコルト製だったが、今ではオーストラリア製の拳銃を使って、二ヶ月に六回の射撃訓練を行っている。柔道や空手などは、ポリスアカデミーの六ヶ月しか行わないので、担当官(名前を聞き忘れてしまった)の彼は、非常に残念とのことだった。

 ちなみに彼は、柔道も空手も有段者とのこと。その彼に射撃訓練を見せてもらったが、グァムやサイパンで撃てるような代物ではなく、マシンガンをぶっ放した。間近で見せてもらったが、物凄い迫力だった。帰り際には、『NYPD』と書かれた、彼達が被っているキャップを頂いた。喜んで直ぐに被った私だったが、「この町でそれを被って歩くと、殺されるかもしれないから、やめた方がよい」と言われ、慌てて脱ぐとカバンに押し込んだ。冗談ではなく、ニューヨークでは、二日と半日に一人の割合で、警察官が殺されているのだから……。

次に、場所をNYPDからゴールド・マン・サックス・アンド・カンパニーへと移動した。

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 ゴールドマン・サックス・アンド・カンパニーは、ニューヨークに4,000人と東京にも800人の社員がいる、世界でも1、2を競う程の証券会社で、アップル・アソシエーションの会員でもある。窓の外はイーストリバーが流れる絶景のオフィスにて、ディレクター・オブ・セキュリティ部門、ブァイス・プレジデント(執行責任者)の、ジョン・C・オレイリー氏に、話を聞いた。

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 ニューヨーク市警は20年間務めると年金が支給されるため、何時やめても良く、現役ばりばりで退職し、この様な警備責任者として再就職する人が多い。それが先の、「警察OBが多いのでコミュニケーションが上手くいっている」との話に繋がるのだ。これもまた、どこかの国の天下りの余生の場所とは大違いである。

1999/09/30発信:一般向けニュース
アメリカセキュリティー視察ツアー・レポート その4

 あいも変わらずガタガタと揺れるバスに乗り、ラガーディア空港へと向かう。なにもバスの所為ではない。東京、いや日本では考えられないほどのガタガタ道のせいだろう。初めてニューヨーク(以下NY)に行った人は、車の中で舌をかまないように、少々口にはチャックをしておいた方がよいかもしれない。

 だからアメ車は、フワフワとした乗り心地なのか!さて、空港に着くと初日に視察に行ったライカーズアイランド刑務所が、イーストリバーの対岸に見えた。視察中に警報が鳴った事件を思い出し、つい先日のことなのに、なぜか懐かしく思える。さて、今からシカゴ空港を経由して、ラスベガス(以下LV)へと向かう。LVでは、宿泊先のミラージュホテルとトレジャーアイランドホテルの警備責任者に会い、LVの犯罪について講義をしてもらうことになっている。ちなみに両ホテルは同一経営下にある。またまた、エコノミーの狭い席に閉じ込められる。

 (今度アメリカに来るときには、絶対ファーストクラスで来てやる!)ちっぽけな決意を秘め、炎天下のLV空港へと到着した。さすがに砂漠の中に造った町だけに、周りには日本のどこにも似ていない風景が広がる。映画『バグジー』の一説だと、炭坑夫だけの町に、その稼いだ金を巻き上げようとしてマフィアがバグジーを送り込んだとなっている。結果は逆に大赤字となってしまったマフィアは、頭に来てバグジーを殺してしまう、本当にあった恐〜い話しだそうだ。今の隆盛を極めたLVを見たら、バグジーはどの様に思うだろうか。

 さて、横道にそれてばかりはいられない。キザな添乗員に迎えられ、ホテルへと到着する。さすがに、超一流ホテルとはこれ程凄い物かと感心するほどに、ロビーの後ろ一面には、海水魚や色鮮やかなサンゴが遠来からのゲストを迎える。それだけで、別世界に入り込み、財布の紐が緩もうというものだ。素晴らしい演出である。隣のトレジャーアイランドホテルでは、表に大きな池があり、そこには海賊船が浮かんでいる。そして、一定の時間毎に海賊船が動き出し、壮大な大海原の対決を再現する。

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 さてさて、到着したのが夕方だったので、その日はゆっくりとディナーを楽しみ、ホテルのスロットコーナーで緩んだ紐を更に緩めた。その結果はご想像に御任せするとして、翌日は、レクチャールームのあるトレジャーアイランドホテルに向かった。(と言っても、無人シャトルに乗って一分ほどだが……)我々を迎えてくれたのは、両ホテルのゲーミングマネージャーの恰幅の良い、私のように髭を蓄えたスティーブ・イージリーだった。彼は、新しいゲームの法律や新従業員の教育をしている。

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 余談だが、ネバダ大学では(ラスベガスはネバダ州にある)カジノ学科があり、ゲーミングの研究や、セキュリティーマネージメントなどを専門に勉強している。日本でも、早急にこの様な専門家を育てる教育機関の設立が望まれるところだ。ラスベガスのゲーム上の犯罪などは、全てネバダ州に属すゲーミングコントロールで管轄されている。その他の、例えば麻薬や殺人などはメトロポリスと呼ばれる市警察の管轄となる。

 従業員(カジノの中で働く人々、メイドなど以外)は、身分証明書(過去に犯罪歴がないか)を、一度でも間違いを起こすと取り上げられ、ネバダ州全てのカジノで働くことが出来なくなってしまう。悪さをした店長が、素知らぬ顔で、どこかの店で働けるいいかげんな世界とは大違いである。ゲーミングコントロールボードが全てのカジノの監視をしているのだ。

 カジノの人間は逮捕することが出来ないが留置する事は出来る。留置所の中にはビデオカメラやマイクロホンが取り付けられ、留置所の中で暴力などがなかったことの証明に利用される。面白いのは、ホテル同士の横の繋がりはなく、自分のホテルでさえ悪さをしなければ、『どうぞよそのホテルで悪さをして下さい』と言うのが、本音らしい。(これも、どこかでよく聞く言葉だが……)

 それでも、犯罪者の写真入りの情報をやり取りしているらしく、その数何と一カ月500〜600人にも及ぶらしい。現在Eメールを準備中とのこと。ホテルから追い出すのは、ホテルの規則を破ったというよりも、私有地であるホテル内で勝手なことをしたという解釈かららしい。

 ホテルやカジノ内には至るところに監視カメラが取り付けられていて、ミラージュだけでも700台ほどある。その全てにビデオデッキが取り付けられている。テープは八時間に一本を交換するので一日に三本が必要となる。テープは一ヶ月から二ヶ月の間で交換するので、古くなったテープは中身を完全消去した後に、従業員に一本$1.5で売っているとのこと。

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 カジノの中で犯罪があれば、カジノ自身が訴えることが出来るが、道路や外であれば訴えても2〜3ヶ月かかってしまうので観光客は訴えず、結局財布の中身さえ戻れば良いで済ましてしまう。しかも、従業員には泥棒くらいでは追いかけるなと教えている(危険だから)いくらLVと言えども犯罪がなくならない元凶と言えるかもしれない。面白いのは、ゲームスタッフのボディチェックは女性にしか行っていないこと。金を盗むのは圧倒的に女性の方が多く、ハンドバッグの中などもチェックしているらしい。

 そして、カジノは州に6%のTAXを支払っている。これは聞き間違っているかもしれないが、それとなく聞いたところ、ミラージュとトレジャー両ホテルで年間10億円の粗利があるとのことだ。本当だろうか。その数字を、「たったそんなものか?」と、思われた方は、相当上手にホール経営をしている方なのだろう。一度、その秘訣を教わりたいものだ。

 さて、色々とスティーブに教わったが、最後に、彼が編集した犯罪のビデオを見た。全部で35の犯罪が映っていた。幾つか紹介しよう。

  1. 初老の男性が、ショップから売り物の上着を金を払わずに出ていく。
  2. 女性の名前の書かれたTC(トラベラーズチケット)を盗んだ男が、カツラを被って買い物をしようとしたが、変装を見破られて捕まってしまう。
  3. スロットを打っている客に、仲間が声をかけ、その隙に、コインを入れたカップを盗む。
  4. ディーラーがこっそりと、チップをポケットに隠す。
  5. 友達の客に、わざと大勝をさせる。

 などなどである。私が、セキュリティーコンサルタントをしていると言ったら、喜んでこのビデオをプレゼントしてくれた。今後の講演会で使用するつもりだ。そう言えば、日本に帰ったら、日本の犯罪ビデオを送る約束をしたことをすっかり忘れていた。日本人は嘘つきだと思われない内に、早めに送るとしよう。

 さあ、これで全ての視察は終わった。昨日の負け(おっと内緒だった)を取り返すとするか。明日は又、狭いエコノミーの席で延々半日かけて東京に帰るのだから、思いっ切り羽を伸ばすとしよう。そして東京に帰ったら一日か二日はゆっくりさせてもらうつもりだ。だが!成田まで迎えに来た社員が、「社長申し訳御座いません!今晩徹夜の検査が入ってます。」「なに〜!勘弁してくれよ!」時差ぼけの頭を吹き飛ばすには、十分すぎるほどの言葉だった。

ラスベガスのカジノの仕組み

METROPOLICE   市警察
NEVADAGAMEINGCONTOROL   州警察
CASINO Security 150名 監視員
Surveillance ? 警備員
Enforcement 150名 執行委員

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